Drive

「襲う場所を教えろ。5分間、車の中で待つ。その5分間に何が起きようと必ず待つ。だが5分を過ぎると面倒は見ない。分かったか?」
そう言って男は携帯電話を投げ捨て、部屋を出ていく。男の着ているジャケットの背には大きなサソリの刺繍が入っている。

そんなオープニング。

裏社会の人間である主人公は、昼は自動車の整備工や映画のスタントマンとして働き、夜は大胆かつ計算されたドライビングで強盗の手助けをする「逃がし屋」である。

主人公は、きっかけあってマンションのお隣さんの人妻、アイリーンとその息子と知り合いになる。次第に恋仲になっていく主人公とアイリーン。しかし服役中だったアイリーンの夫、スタンダードが出所し帰ってくる。スタンダードは服役中に作った借金返済のために強盗を強要されており、主人公はアイリーンの家族を守るため手を貸す事に。そこから物語はバイオレンスに展開していく…というのが大まかなストーリー。

・情報の少なさ

この映画、情報が少ない。

まず、主人公の名前が出てこない。出身などここに至るまでのバックグラウンドも一切なしの「名無しの主人公」である。初めて観た時、一向に名前が明かされない事に驚いていたが、本来、主人公に名前はなくてもいいのかもしれない。主人公は「主人公」なのだから。

情報が少ないのは台詞が少ないことに起因している。

僕は台詞には状況説明のための「説明セリフ」が存在する、と思っている。物語が進行する中で状況を説明したり補足情報を話すことで、視聴者が置いてきぼりにならないよう理解しやすいようにするものだ。

この説明セリフが多ければ多いほど、なんだかチープでつまらなくなってしまうものと僕は考える(本来は視聴者に対する配慮なので悪とは思わない)が、この作品はそれが削がれていた。

それでも人物のキャラクターやその心情、物語の展開が難なく理解できる。その削がれた要素を補填しているのは、演者のライアン・ゴズリンク、キャリー・マリガンの表情や視線、会話の間などの卓越した演技、こだわり抜かれた色彩や光での表現であると気付く。

・色彩と光

こだわりを感じたのは色彩と光の「意味」だ。

主人公がアイリーンの部屋で会話している良いムードのシーン。

アイリーンの背後は決まってオレンジの壁紙であったり、窓からのオレンジの夕日が差し明るい暖色となっている。

対照的に主人公の背後は決まってターコイズブルー、または窓際の暗い影となっており寒色である。

これは「主人公は裏社会の人間、アイリーンは日の当たる表社会の人間」ということが色彩や光で表現がなされている。

そして、スタンダードが服役から帰ってきて食卓を囲むシーン。ここから物語は悪い方向へ進むのだが、背後の壁の色はターコイズブルーである。

暖色・寒色、柔らかい日の光、影、鮮やかで恐ろしい赤色など、注目して観るべきポイントかと。

・カエルとサソリの寓話について

作中に出てくる「カエルとサソリの寓話」について、日本人は馴染みがないのではないだろうか。僕は全くなかったので観賞後に調べた。ざっとまとめるとこんな感じ。

河を渡りたいサソリがいた。サソリはカエルに自分を背に乗せて河を渡ってくれないかと尋ねた。
カエルは「お前乗せたら途中で毒針で刺してくるかもしれんやん、嫌やわ」と断った。
サソリは「そんなんしたら俺も一緒に沈んでまうやん、大丈夫そんなことせんよ」と言った。
カエルはそれもそうやな、大丈夫か〜、とサソリを背に乗せ河を渡ることにした。
河を渡っている途中、サソリはカエルに毒針をぶっ刺し、カエルはサソリと河に沈んでしまう。
カエルは沈みながら「いや、なんでなん…」とサソリに聞く。
サソリは「すまん、これが俺の性(さが)やねん…」と答え共に沈んでいった。
隠しても抑えていても、抑えきれない「本性」の話。

これがこの作品のテーマじゃないかな、と僕は考える。隠していても滲み出てきてしまう主人公の暴力的な本性、語られないこれまでの主人公の人生が少し垣間見える。

そしてそれを自身で悟っていた主人公は最後、アイリーンのもとに戻らなかったのではないだろうか。

・まとめ

ラ・ラ・ランドのライアン・ゴズリングが良くて、他の出演作品は…と探しこの作品を観た。

観る人それぞれ感想があると思う。つまらなかったならそれはそれでいいじゃない。

僕はこの作品が好きで、大いに楽しんだ。感想を書くためでもあるが10回くらい観た。

それにしてもこのアイリーンを演じるキャリー・マリガン、べらぼうに可愛い。一瞬で心奪われる。人妻であっても恋してまう主人公の気持ち、大いに理解できる…人妻を好きになるとロクなことない。人妻はマチアプをするな

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